幼馴染の近所に住みたい
物件探しや住む場所選びは、お客様によって大切にしたいポイントがそれぞれ違います。
『「結構」いい家』の施主様は、生まれ育った場所、幼馴染の住んでいるこの地域に住みたいということで、エリアを絞っての物件探しから始まりました。予算は中古物件とリノベーション費用を含めて2,000万円。付近の中古住宅の物件を片っ端からあたっていたのですが、なかなか思うような物件が見つかりませんでした。ある日「見てほしい物件がある」と施主さんから伝えられたのが、この家でした。
更地で販売するはずの物件を交渉
積水ハウスの平屋建ての住宅は、高度経済成長期に建てられた住宅。この家を倒して、更地にすることを条件に1,200万円で販売されていたのです。
中を確認したところ、もちろん傷んでいる部分は多くありますが、構造もしっかりとしていて手を加えれば面白い家になりそうです。
そこで、チームで仕事をしている不動産やさんに、交渉をお願いしました。一般的に、不動産の取引の交渉は、素人がするよりプロ同士で話し合いをしてもらったほうがスムーズなのです。私たちは倒すはずの家が欲しい、売主さんは更地にしなくても良いので手間も経費も削減できる。交渉の結果、300万円安い900万円で購入することができました。
トラス構造をデザインに活かして
軽量鉄骨造のこの物件は、その当時の技術を集めて大量に作られた住宅です。理にかなったディティールがそこかしこに活きています。
リノベーション後のデザインポイントにもなっている黒いトラス構造は、専門用語で「結構」と呼ばれるものです。無駄なく建物の屋根を支えてくれているこの構造は機能美に溢れて今の時代でも新鮮に見えますよね。
安く購入できたとは言え、リノベーションに使える予算も限られています。構造上、開口部を変更すると費用もかさむので、玄関ドアも枠は変えずに建具だけ木製のものに作り替えるなどの工夫を重ねました。
ザ・昭和の住宅を現代の施主さんの未来の生活に合わせるため、間取りも大幅に変更しました。軽量鉄骨造の住宅は、直角ががっちり保持されて地震にも強く、間仕切りを取り外した比較的大空間の部屋づくりにも向いています。施主様にとって必要なスペースを確保しつつ、空間にゆとりをもたせるのが設計士の腕の見せ所とも言えます。
独特の外観はコストカットの役割も
この家の外観デザインの特徴は、屋根と壁の関係だと思います。当初の設計ではリノベーション前の屋根の形状と同じものに、ガルバリウム鋼板を貼る予定でした。通常の屋根は建物より大きくなっていて、庇(ひさし)や軒天(屋根の内側)などがあります。屋根をふき替えれば、ここも補修したり塗装し直したりしなければなりません。
予算内に理想の家が作れるよう、設計と施工とで何度も話し合いをする中で、施工側からの提案で決まったのが、この屋根と建物が一体化したデザインです。最も大きなメリットは、屋根が小さくなること。その分施工コストも抑えることができます。
テレビが玄関の土間にあっても良い
リノベーションにする理由はいろいろあるかもしれませんが、新築よりコストを削減できるっていうのは大きいですよね。
家は生活に無くてはならないものですし、大きな影響力がありますが、それが全てではないのです。趣味に使うお金や教育費に使うお金、旅行に使うお金など、全部あきらめて理想の家を手に入れることが幸せでしょうか。
理想の暮らし方は人それぞれ。必要な空間や部屋の役割も家族によって違います。例えば、テレビはリビングにあるものという固定概念も疑ってみましょうか。
この家では玄関の土間にテレビがあるんです。近所の方や子供たちが家に上がらなくてもテレビを見たりお茶を飲んだりするスペースは、まるで内と外をやわらかくつなぐクッションの役割を担っているようです。
昭和のメーカー住宅がこんなに素敵にリノベーションできると思いませんでした。たくさんの物件情報からリノベに向いた家を探すのは自分たちだけでは無理!小橋さんが一緒に探してくれて、どんなリノベができるか出してもらえたから、出会えた家ですね。