ギャップのある家

蜘蛛の巣NGから家ですらない物件へ

「ギャップのある家」の施主さんは、岡山駅のすぐそば、奉還町エリアで物件を探してリノベーションを希望されていたご夫婦。駅近くということで、リノベーションによさそうな物件自体が少なく、あっても価格が高い。安い物件があったと思えば、とても住めそうにない「狭い・古い」もので、とにかく苦労しました。
良さそうな物件があったと見学に行っても、奥様が「蜘蛛の巣がある」「暗い」「この間取りじゃ住めない」と…。ここからリノベーションをしますから、と言ってもなかなか受け入れてもらえませんでした。それでも、物件探しに時間をかけるうちに、お客様が「これ良さそう!」と見つけてこられたのが、元工場だったこの物件でした。
蜘蛛の巣がダメって言ってたのに、家ですらない物件を自身で見つけてこられたというのには、正直びっくりしました。
住宅以外の特殊な物件は、あまり情報が出回らないものです。このような物件を探すのには、エリアを決めて情報を集めたり、歩き回って探す、という方法が案外有効なんですよ。

もと、やすりの工場だった空き家物件

工場だからこそのメリットデメリット

工場という物件の良さは、何といっても広い空間です。このあたりの住宅や商店の物件は区画が狭く、ぎっしり密集して建っているものですが、工場は古いものでも機械があったり、作業スペースなど、広々とした空間があります。建物の高さもありますし、やり方次第で面白い空間になります。
価格の安さも魅力的で、とっても小さな家が500万円くらい、その倍以上の広さがある町工場が630万円と、とにかく安いのです。そしてラッキーなことに、密集地なのに北側が空き地だったため、施工もしやすいというおまけ付き。
一方でデメリットもあります。細長い大きな空間を支えるのは四隅の柱4本のみ。このままでは荷重と揺れ対策が不安です。

beforeの建物を下から見上げたところ

しっかりした構造にするための門構え

荷重と揺れ対策に、しっかりとしたL型の柱と太い梁で鉄骨の門構えを作り、既存の柱をつかんでしっかり固定しました。そうすることで内側から建物を支えてくれるのです。私たちは家をつくるのが仕事ですが、地震などの被災地の家屋を点検することもしています。専門家としてのボランティア活動ですが、建物が倒れてしまった実例を何軒もみることで、逆にどうすれば倒れない家が出来るかを考えることができるのです。岡山は全国でも地震の少ない地域です。それでも丈夫な家に越したことはないですよね。

新たに入れた白い鉄骨で内側から建物を支える

ギャップ=段差を利用して住みやすく

この家はもと工場だったため、1階の天井高がかなり高いのも特徴でした。高くて広い大きな空間を住みやすくするため、様々な高さの床を作りました。そのままだと2階へ上がる階段が長くなりすぎるので、踊り場のような部分にはバス・トイレスペースを。また、1階の中に中2階を作り、上がるための階段は設けず、壁面収納の棚板を使って上がるように。

高すぎる天井の中に高すぎない部屋を作ったら、まるで秘密基地のような空間ができました。
ギャップ=段差があることで、わくわくするような遊びがある家になっています。

怖いと感じることは全て解決する

長い階段の抜けている部分が怖いと感じる奥様。でも板でふさいでしまうと、階段下に光が通らず暗くなってしまいます。そこで、光を通すポリカーボネート板で塞ぎました。また、手すり下も空いているのが不安と仰ったので、同じように塞ぐことで、安心して昇り降りできるように。
階段はしっかりと新しい梁に固定され、床との筋交いのような役割を果たしています。

あかりを入れながら不安を解消したスケルトン階段

予算を低く抑えるための工夫

ほとんどの場合、予算は限られています。大切なお金を上手に使って予算内におさめるために、何が必要かを考えることはとても大切です。収納の扉や、部屋の扉など、後から付けれるものや無くても大丈夫なものは後回しにします。
古い窓の味わいある外観を残しつつ、内側に新しい窓を付けることで気密性や断熱性が驚くほどよくなります。さらに、内窓を付けると補助金が出るので、自己負担を増やすことなく、家の性能はグレードアップ出来ます。
補助金には制度や出所がいろいろあり、めいっぱい活用するには、常に新しい情報をキャッチする必要があります。気になる方は一度補助金勉強会に参加してみてください。

味のある木の窓のデザインも活きる高性能な内窓

自分たちのための家に必要なものは?

駐車スペースを確保するため、工場に付随していた事務所の建物は無くし、雨に濡れないガレージに。駅近くとはいえ、岡山のような地方都市では車は必須の交通手段です。
住む人と建物のためにやったほうが良いことを、どう空間に溶け込ませるかがポイント。機能があってデザインが美しいものが出来たとき、本当に良かったと思いますが、「ギャップのある家」は正にそんな家になりました。
家族の成長に合わせて、どんなふうに成長していくか楽しみな家です。

駐車スペースからの入口と通りからの玄関

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