語り繋がれる家

3代で繋ぐ家

初代が建てた家を、先代が増築し、ここからさらに住み繋ぐために3代目である今の小橋工務店社長、小橋正浩がリノベーションすることになりました。
中には初代の施工中に工事に参加していたという大工もいました。
何度でもメンテンナンスし、これから先何10年・何100年でも繋いでいけたら嬉しいですね。

before外観:3世代で引き繋いできた家

越屋根で家全体に光を

リノベーションするにあたり、当社の設計士と工務店が当時現調しに行ったときの印象は「暗い」でした。窓は何カ所もあるのですが、部屋が多く、壁で遮られて光が内側まで入ってこないためです。
天窓を付けようかという話にもなりましたが、話しているうちにそれも違うのではと感じました。歴史のある建物であるため、なんとかそれを活かせないかと考えたのです。

before:家全体が暗く、天井も低く狭い印象

越屋根で家全体に光を

そこで生まれたのが「腰屋根」を付けるという案です。
腰屋根とは、既存の屋根の中央の一部を上に持ち上げたような屋根です。立ち上がり部分のサイドに採光ができる窓が付けられます。
これなら部屋の内部まで日の光を行き渡らせられます。

あるものを活かしデザインに

さらに、「どうせ腰屋根にするなら、既存の軸となる丸太を残しつつそこに新しい木材で補強することで、その構造を見せるデザインとして昇華できるのではないか」と現調中に2人で盛り上がり、頭の中でどんどんと完成像が見えてきます。
施主さまにその構想をお伝えすると、「よく分からないけど、楽しいことになりそう」とGOサインが出ました。
ここで一緒に楽しめるかどうかが、意外にも良いリノベーションのカギを握ることもあります。

完成後の姿を見て、施主さまは「任せて良かった」ととても喜んでいただけたようでした。

施工中:腰屋根をつくるための軸となる構造
完成後屋内:構造を見せることでデザインに昇華
完成後外観:下の屋根も一体化して構造的に強く

床と一体化した畳の理由

リビングにも畳を敷こうという構想がありましたが、段差にするか床と一体化するかで悩みました。
最終的に座ったり寝転んだりも自由にできるし、段差がない方が引っかかりがなく危なくないだろうということで一体化することになりました。
また、このフロアはリビングキッチンダイニングなどが全て一体となるとても広いスペースで、和室の障子を開けたスペースも含めるとなんと32畳!そんな広さを掃除しようと思うとなかなか重労働ですが、フラットな空間なのでルンバにお任せできます。

床と一体化した畳。どう使うかは自由!

仏壇は作り付けで

仏壇は施工前でも作り付けのものを使っていました。
故人を大事に思う気持ちを新しい家でも引き継ぐべく、この家でも作り付けの立派な仏壇を設置しました。

before:作り付けの仏壇
after:立派な作り付けの仏壇を新調

オンリーワンのリビングテーブル

部屋の中央にあるキッチン付きのリビングテーブル。そこに使っている一枚板はお気に入りの木材を使っています。実はこの板、材木市で施主さまと一緒に選んだ木材なんです。
普通、材木市は一般の人は行くことはありません。なぜなら大抵、工務店はいくらでその木材を仕入れたかをできるだけ施主さまに知られたくないからです。
ですが私たちは一緒に選び、値段も開示します。
その上で、私たち工務店側からはマージン料はもらわないということを伝えます。驚かれるでしょうが、実はこれもひとつの交渉術。その場で値切るには、自分たちも誠意を見せることが大事です。
こうしてできるだけ安く木材を仕入れることができるので、私たちも施主さまも嬉しい結果になるのです。

足の部分も同じ板から取っています

そのまま使える場所は手を入れず

リノベーションしたこの棟の隣には介護用のお風呂を挟み、二階建ての建物がありました。そこで娘さんたちが住んだり、寝泊りもその棟で行なっていました。
実は今回、その部分には手を入れていません。なぜならその部分はそれだけで成立しているから。今回リノベーションした場所に必要だと思ったのは広い空間、家族全員で集まれる憩いの場でした。そのため細々とした部屋を無くして広い空間として活用できたのです。
リノベーションは必要なものとそうでないものの取捨選択ができるのも大きな強みです。

before:奥に見える棟が二階建ての別棟

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フロアプラン

設計士/古舞 行央